複素解析

第6講 複素積分

曲線 $\mathbf{C}$ における曲線とは,$\mathbf{R}$ の閉区間で定義され $C$ に値をとる(有限個の点を除き)微分可能な関数,あるいはその像集合
$\{\,z(t)\ |\ t_1\le t \le t_2\,\}$ $(t_1,t_2\in\mathbf{R},\ t_1 < t_2)$
のことをいう.曲線の向きは原則として上のように表したときのパラメータ $t$ が増加する向きを正の向きと定める. 曲線 $C$ の向きを逆にしたものを考えるときは $-C$ と表す.
複素積分 複素関数 $f(z)$ の曲線 $C=\{\,z(t)\,|\,t_1\le t\le t_2\,\}$ に沿った積分を
$\displaystyle \int_Cf(z)\,dz=\int_{t_1}^{t_2}f(z(t))\,z'(t)\,dt$ 
により定義する.
微分と積分 当然というべきであろうか,次が成り立つ:
複素関数 $f$ が原始関数をもつとき, すなわち,ある領域 $D$ で正則な関数 $F$ によって $f(z)=F'(z)\quad(z\in D)$ と表されるとき,$D$ 内で点 $a$ から点 $b$ に到る任意の曲線 $C$ に対して
$\displaystyle \int_Cf(z)dz=F(b)-F(a)$
が成り立つ証明pdf
この場合,積分の値は経路によらずに定まるので,$\displaystyle \int_a^bf(z)dz$ という表記が可能になり,一変数の実定積分と同様に計算される.
周回積分 始点と終点が一致するような曲線を閉曲線というが, 閉曲線 $C$ に沿う複素積分を複素周回積分と呼び
$\displaystyle \oint_Cf(z)\,dz$
のように表す. この場合の積分路の向きは $C$ がその内部($C$ によって囲まれる有界領域)を左手に見て進む向きとする.
 特に,$z^n\ (n\in\mathbf{Z})$ の,円周 $C_r=\{\,z\ |\ |z|=r\,\}\ (r>0)$ に沿った周回積分は
$\displaystyle \oint_{C_r}z^n\,dz =\left\{\begin{array}{ll} 2\pi i&(n=-1)\\ 0&(n\neq -1) \end{array}\right. $
となる詳しく!
Cauchyの積分定理 次のCauchyの積分定理は,複素関数論における基本定理である:
複素関数 $f$ が単連結領域 $D$ で正則ならば,$D$ に含まれる任意の閉曲線 $C$ について
$\displaystyle \oint_Cf(z)dz=0$ 
が成り立つ略証pdf
ここで,単連結領域とは「穴のない」領域のことをいう例えば?
Cauchyの積分定理により,ある領域で正則な関数の複素周回積分はその領域内で積分路を変更できることになる詳しく!
Cauchyの積分公式 次のCauchyの積分公式は,複素周回積分の計算において基本的な役割を果たす:
複素関数 $f$ が単連結領域 $D$ で正則ならば,$D$ に含まれる任意の閉曲線 $C$ および $C$ の内部の点 $a$ について
$\displaystyle \oint_C\dfrac{f(z)}{z-a}dz=2\pi if(a)$
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